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「AIが原因?Windows 11不具合急増の裏側3つの真実」

ojya

最近、Windows 11のアップデートに関連した不具合が相次いで報告されています。特に2025年10月には、ある更新プログラムの適用によってパソコンの回復環境(WinRE)でキーボードやマウスが使えなくなるという致命的な問題まで発生しましたbleepingcomputer.combleepingcomputer.com。なぜこれほど頻繁に不具合が起きているのでしょうか? その裏側にはAI(人工知能)の活用が関係しているとも言われています。本記事では、Windows 11で不具合が急増している原因や背景について、3つの真実に基づきやさしく解説します。

結論

結論から言えば、Windows 11の不具合急増の背景には次の3つのポイントがあります。

  1. 致命的な不具合への異例の緊急対応: 回復環境で入力不能になる深刻なバグが発生し、マイクロソフトが異例の速さで緊急修正パッチを配信しました。
  2. AIによるコード自動生成の影響: マイクロソフト社内のコードの約20~30%は既にAIが生成しており、この新しい開発手法が品質面に影響を及ぼしている可能性があります(CTOは2030年までに最大95%がAI生成になると予測)。
  3. AI導入に伴う人員削減と品質管理の低下: AI活用の裏で約6,000人の技術者や管理職が解雇され、人間によるチェック体制が手薄になったことで、不具合の増加に拍車をかけている可能性があります。

以上の3点を踏まえ、詳しく見ていきましょう。

この記事を読むメリット

  • 深刻なWindows 11不具合の内容と対処法がわかる。実際に起きた致命的バグ(WinREでの入力不能問題)の原因と、マイクロソフトの対応策について理解できます。
  • 不具合対応の優先順位の理由が理解できる。 なぜ一部の不具合はすぐ修正され、他の不具合は放置されがちなのか、その背景にあるマイクロソフトの判断基準を知ることができます。
  • AI活用がソフト開発に与える影響を学べる。 マイクロソフトや業界全体で進むAIによるコード自動生成が、不具合増加の原因の一つとされる理由と、そのメリット・デメリットについて解説します。
  • AI時代の開発体制とユーザーへの影響を把握できる。 AI導入による社内体制の変化(人員削減など)がソフト品質や私たちユーザーにどう影響するのか、将来を見据えた視点が得られます。

Windows 11不具合が多発する理由

では、なぜ最近のWindows 11では不具合が多発しているのでしょうか。その主な理由は上記で挙げた3点に集約されます。それぞれ詳しく説明します。

  • 1. 緊急パッチが必要なほど深刻な不具合の発生: 2025年10月、Windows 11に回復環境(WinRE)でキーボードやマウスが一切反応しなくなるという重大なバグが発生しました。パソコンが起動しなくなった際の最後の手段である回復メニューが操作不能になるという、事実上「PCが詰んでしまう」不具合です。この問題の原因は10月14日に配信された更新プログラム「KB5066835」で、インストール後にWinRE上のUSBデバイス(マウス・キーボード)が動かなくなってしまいました。このバグは影響が非常に深刻なため、マイクロソフトは異例の速さで緊急の修正パッチ「KB5070773」を配信し(日本時間10月21日)迅速に対応しました。通常マイクロソフトは月例のアップデート(いわゆる「Patch Tuesday」)以外での修正は稀ですが、今回は例外的なアウトオブバンド更新としてすぐに対処せざるを得なかったのです。このようにPC自体が動かなくなるリスクがある致命的な不具合は最優先で潰されます。一方で、ゲームのフレームレート低下音が出なくなるといった報告のある問題については、PCが起動不能になるわけではないため後回しにされている状況です。つまり、マイクロソフトは不具合修正の際に「どれだけ深刻か(PCが動かなくなるか)」という優先順位で対応せざるを得ない現状があるのです。
  • 2. AIによるコード自動生成が招く品質リスク: 背景には、マイクロソフトの開発手法が大きく変わりつつあることがあります。同社のサティア・ナデラCEOは「現在、社内リポジトリのコードの20~30%はAI(ソフトウェア)が書いたものだ」と明かしています。さらに技術責任者であるケビン・スコットCTOは「2030年までにほぼ95%のコードがAI生成になる」と予測しています。実際、WindowsやOfficeといった我々が使うソフトウェアの一部は既にAIが書いたコードで動いているのです。またライバル企業のGoogleでも、新規コードの30%以上がAI生成によるものだと報告されています。
    AIがコードを書くこと自体には利点もあります。開発者の生産性を飛躍的に向上させ、大量のコードを短期間で作成できるため、新機能の開発スピードは上がるでしょう。また、人間が陥りがちな単純ミスの削減も期待できます。しかしその一方で、品質管理の難しさという新たな課題も浮上しています。AIが生成したコードは内部で何をしているか人間には直感的に理解しづらい場合があり、特に何十年も改良を重ねてきた巨大で複雑なWindowsのコードベースにAI産のコードを継ぎ足すことは、副作用(バグ)を生みやすくします。AIはしばしば人間には思いつかない奇妙なコードを書くこともあり、それが既存システムと予期せぬ相互作用を起こすケースも考えられます。つまり、AI頼みで開発を急ぐあまり人間によるチェックやテストが疎かになると、コード全体の整合性が崩れ不具合が増える恐れが指摘されているのです。今回のWinRE不具合やその他の問題頻発は、そうしたAI開発の「ほころび」が表面化したものではないか、との見方もあります。
  • 3. AI導入による開発体制の変化(人員削減とチェック体制の弱体化): AI活用の進展に伴い、マイクロソフト社内の人員構成にも大きな変化が起きています。同社は2025年5月に約6,000人のレイオフ(解雇)を実施しましたが、その対象は従来のイメージとは異なり、ソフト開発者(ソフトウェアエンジニア)や製品マネージャーなど技術系職種が中心でした。ワシントン州では解雇された2,000人のうち実に4割超がエンジニアで、次いでプロダクトマネージャーやテクニカルプログラムマネージャーといった中間管理職が多く含まれていたと報じられています。一方で顧客対応などの部門はほとんど影響を受けていなかったとのことです。これは、「AIによってコードを書く仕事が減ったため、人間のプログラマーをそれほど抱える必要がなくなった」ことを示唆しています。実際、ナデラCEO自身「AIがコードを書くなら、人間のエンジニアの必要数は減る」と述べています。要するに、AI時代に合わせた組織再編として高給な技術者や中間管理職がリストラされてしまったのです。
    この大規模な人員削減はコスト削減や組織のスリム化(「決定の迅速化」のための階層圧縮)と公式には説明されていますが、その裏にはAIへの巨額投資のツケを人的コストの削減で補填する狙いもあったと見られています。結果として、開発現場では人手によるコードレビューやテスト、品質管理のリソースが減少することになりました。優秀なエンジニアでさえも、AIを使いこなしてより高次の設計やAIへの指示出しができる人以外は不要と見なされる厳しい状況です。そのため、これまでなら人間の目で発見・修正できていた不具合が見逃されやすくなっている可能性があります。AIで効率化したはずが、逆に製品品質の低下やユーザーからの信頼喪失を招いているのだとすれば、本末転倒と言わざるを得ません。

以上のように、Windows 11の不具合多発にはソフトウェア開発における優先順位の問題AI導入による開発プロセス変化という二方面の理由が存在しています。

回復環境バグと緊急パッチ配信

Windows 11の「回復環境 (WinRE)」の画面。「PC をリセットする」やセーフモード起動などを行う青いメニュー画面です。このWinRE上でキーボードとマウスが反応しなくなる不具合が2025年10月に発生し、マイクロソフトが緊急対応しました。

具体的に何が起きたのか、時系列で見てみましょう。2025年10月14日、Windows 11 バージョン24H2/25H2向けに配信された累積更新プログラムKB5066835をインストールした後から、問題が発生しました。Windowsの設定画面などから「今すぐ再起動」を実行して回復環境(上図の青い画面)に入ると、USB接続のキーボードやマウスが全く動かなくなり、一切の操作ができなくなるのです。通常、回復環境ではWindowsが起動しなくなった場合にシステムの初期化や修復を行えます。しかし入力デバイスが使えないため、「続行」や「トラブルシューティング」といったオプションを選択できず、事実上PCの復旧手段が断たれる深刻な状況に陥りました。

この不具合はWindows 11(24H2/25H2)およびWindows Server 2025に影響することが公式に確認され、マイクロソフトはすぐに問題を認識しました。そしてわずか1週間後の10月21日(米国時間20日)に、異例の緊急アップデートとなる「KB5070773」がリリースされ、このバグが修正されたのです。この緊急パッチは通常のWindows Update経由で自動配信されており、手動でMicrosoftのサイトからダウンロードして適用することも可能です。対象となるWindows 11ユーザーは、早めにWindows Updateを実行してこの修正を適用することが推奨されます。アップデート後、念のためShiftキーを押しながら再起動して回復環境に入り、USBマウス・キーボードが正常に動作するか確認してみると良いでしょう。

マイクロソフトが通常の月例パッチを待たずに緊急の更新を出すのは極めて異例であり、今回の問題の深刻さがうかがえます。実際、「Windowsが起動不能になった際の最後の命綱」を断つバグは放置すれば企業ユーザーにも甚大な影響を及ぼしかねず、賠償問題に発展するリスクすらあります。このため優先度“最優先”で即座に修正されたわけです。

一方で、同じKB5066835のアップデートに起因する他の不具合も報告されています。例えばローカルのHTTP/2接続(localhostが127.0.0.1)にアクセスできなくなる問題や、特定のゲームでフレームレートが低下する、オーディオデバイスが認識されず音が出なくなるといった現象です。しかしこれらは「PCが起動しない」「作業が一切できない」というレベルの致命傷ではないためか、現時点で緊急パッチは提供されていません(※ローカルホスト接続問題については後日回避策のガイダンスが出されました)。影響を受けるユーザー数ではこちらの方が多い可能性もありますが、より深刻度の高い問題から優先して対処されている状況と言えるでしょう。ユーザーとしては不満も残りますが、裏を返せば「PCが動き続ける限りは後回し」という判断基準が透けて見えます。

安定したWindowsのために求められる姿勢

以上の事実から浮かび上がるのは、AI技術の活用による開発効率化と、ソフトウェアの品質・安定性とのトレードオフです。マイクロソフトはAIを駆使して開発スピードを上げていますが、その結果としてこれまでにない種類の不具合が次々と発生し、対応が後手に回っている印象を受けます。皮肉なことに、開発を効率化したはずのAIが、ユーザー体験を損ねるバグを増やしてしまっては本末転倒でしょう。私たち一般ユーザーにとって、新機能の多さやリリースの速さよりも、日々使うWindowsが安定して確実に動作することの方が何倍も大事です。マイクロソフトにはぜひ、AIを活用しつつも従来以上に慎重なテストと品質管理を行い、安心してアップデートできる環境を整えてほしいものです。

また、今回の不具合多発の裏側では多くの技術者たちの雇用が失われるという現実も進行しています。AI導入によって真っ先に影響を受けたのは単純作業の職種ではなく、皮肉にも高度なスキルを持つソフトウェアエンジニアやプロジェクト管理者たちでした。AIがコードを書く時代、プログラマーは「コードを書く人」から「AIに何をどう書かせるか指示し、AIの出力をチェックする人」へと役割が変わりつつあります。この変化についていけない人材はたとえ優秀でも容赦なく切り捨てられる──それが現状の厳しさです。今回のWindows 11アップデートの混乱は、AIへの移行期における一時的な問題かもしれません。しかしその陰で、多くの開発者たちの生活やキャリアが静かに失われている事実も忘れてはならないでしょう。

結局のところ、AI時代においても「最後は人間の目と判断」が品質保証の要です。マイクロソフトをはじめIT企業各社には、効率化と品質確保のバランスを再考し、ユーザーの信頼に応えるプロダクトを提供し続けてほしいと願います。安定したWindowsあってこその新機能であり、AI技術もうまく人間がコントロールしてこそ真価を発揮するのです。私たちユーザーも最新技術の恩恵を享受しつつ、問題が起きた際には正しい情報に基づいて対処し、必要ならアップデートを見送る慎重さを持つことが大切かもしれません。Windows 11の不具合急増の裏側にある「3つの真実」を知ることで、今後の動向に注意しつつ、安全・快適にPCを利用していきましょう。

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