導入文
「戦略=戦いを略す」。成果を出す人と出せない人を分けるのは、“何をやるか”よりも“何をやらないか”。とはいえ、感情(苦手・面倒・今は儲からない…)で切り捨てるのは本質からズレがちです。
本記事では、リチャード・ルメルト『良い戦略・悪い戦略』の原則と、エリヤフ・ゴールドラット『ザ・ゴール』の制約理論(TOC)を軸に、「やらないこと」を科学的に決める方法を解説します。キーワードは全体最適とボトルネック。組織でも個人でも、最短距離で成果を出す“やらない勇気”を手に入れましょう。
結論
- 良い戦略は、全体の目的に対して最も効く一点に集中し、他をあえてやらない。
- その判断軸は感情ではなく構造。仕事や事業は“鎖”や“桶”のような連鎖構造で、最も弱い部分(ボトルネック)が全体成果を決めます。
- ボトルネックは必ず移動するため、定期的な点検→集中→更新が不可欠です。
この記事を読めばどんなメリットがあるのか
- 「やらないこと」を客観基準で決められる
- 事業やキャリアの最短成長ポイント(ボトルネック)が見つかる
- チーム用/個人用チェックリストと週次点検テンプレで今日から運用できる
- “頑張っているのに成果が出ない”状態から脱出できる
戦略の定義:戦いを「略」すとは何か
- 良い戦略=本質に切り込み、最も効果の上がるところに資源を集中すること
- 悪い戦略=本質でない領域に理想やスローガンを散らし、なんでもやること
→ 戦略とは「やらないことを決める行為」そのもの。
NGな「やらない」の決め方
- 「苦手だから/気が向かないから/今すぐ儲からないから」→感情ベースの切捨ては全体の成果と無関係になりがち。
全体最適で考える:制約理論(TOC)のコア
事業もキャリアも連鎖です。全体のスループット(流量)は最も遅い工程=ボトルネックで決まる。
『ザ・ゴール』の有名な比喩を2つで理解しましょう。
1. ハービー君の行進
- 隊列の速度は一番遅い子(ハービー)に依存
- 先頭にハービーを置き、全体のペースを揃え、荷物を分担すると全体速度が上がる
⇒ 今の全体のハービーはどこかを特定し、そこに支援と資源を集中する。
2. 鎖とリービッヒの桶
- 鎖の強度=最も弱い輪
- 木桶の水位=最も短い板の高さ
⇒ 弱い部分を補強しない限り、他を鍛えても全体は強くならない。
「得意に集中」は半分正解
- 得意を伸ばすのは重要。ただし全体最適の視点では、ボトルネックの強化が最優先。
- 例:広告・LP・リード獲得が順調でも、成約(セールス)が弱ければコストだけ膨らむ。この場合、広告強化は“やらない”。成約設計の改善が先。
TOCの5ステップ:今日から回す意思決定ループ
- ボトルネックを見つける
- ボトルネックを徹底活用する(稼働率100%化、ムダ待ちの解消)
- ボトルネック以外を従わせる(余剰を出さずWIP/在庫を抑える)
- ボトルネックを強化する(設備・人員・スキル・仕組みの増強)
- 慣性に注意して①へ(ボトルネックは移動するのが前提)
ポイント:④に飛びつかず、②→③の設計だけで改善が起きるケースは多い。
「やらないこと」判定フレーム(ビジネス)
以下の3条件をすべて満たさないタスクは“やらない/後回し/委任”を検討。
- ボトルネック直接性:それは今のボトルネックを動かすか?
- スループット影響:全体の売上/価値供給量に短〜中期で効くか?
- 資源効率:同じ工数・費用で、他施策より投資対効果が高いか?
例:
- × バズ狙い記事量産(成約がボトルネックのとき)
- ○ オファー設計/価格設計/顧客教育コンテンツの整備(成約に直結)
「やらないこと」判定フレーム(キャリア)
- 目標:例)「企画を通し昇進したい」
- 現状:発想は得意、プレゼンとデータ解釈が弱い
- 判断:弱点(プレゼン/分析)がボトルネックなら、あえてそこに集中投資。
- × 得意のアイデア出しだけ増やす
- ○ プレゼン練習、ストーリー設計、A/Bで資料検証、基礎統計の短期ブート
好き/嫌いで決めない。目的達成の制約かどうかで決める。
週次・月次の「ボトルネック点検」テンプレ
チーム用(週1/隔週15分でOK)
- 今最も滞っている作業/部門/時間帯は?
- それはどこで/誰に/いつ発生?定量指標は?
- そこを徹底活用する障害は?(待ち・手戻り・優先度の衝突)
- 従わせる設計は妥当?(WIP制限、キュー順、カットすべき着手)
- 次に詰まりそうな場所は?先回りの手当ては?
個人用(週1で5〜10分)
- 今週の最短成長ポイント(最短で効く1手)は?
- それは本当にボトルネックか?(目的→要件→ギャップで検証)
- 15〜30分で着手できる最小ステップは?
- 解消後、次の制約はどこへ移るか予測する。
実践ミニワーク(5分)
- 目的を1行で:例)「来月の成約率を2→4%へ」
- 現状の流れを並べる:流入→興味→比較→体験→成約
- 各工程の指標を書く(CVR, 待ち時間, 手戻り率, 稼働率)
- 最小値=ボトルネックを赤丸
- 今週は、徹底活用→従わせる→強化の順で“やること”を3つ、“やらないこと”を3つ決める
- やらない例:ボトルネック無関係のUI微修正、効果検証前の広告増額、重複レポート
結論(まとめ)
- 戦略は、やらないことを決めること。
- 判断基準は全体最適とボトルネック。感情ではなく構造を見る。
- TOCの5ステップ(特定→徹底活用→従わせる→強化→再特定)を週次点検で回し続ければ、余計な努力を削ぎ落とし、最短距離で成果が伸びます。
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