ToT式プロンプト入門:思考を“ツリー構造”化し、複雑課題を俯瞰する新戦略

複雑な問題に直面したとき、私たちはつい“一本道”の解決策ばかりに目を向けがちです。しかし、それでは真の最適解には辿りつけないことも――そんなときに力を発揮するのが ToT(Tree of Thought)式プロンプト です。
本記事では、ToT式プロンプトとは何か、その特徴や使い方、COT(Chain of Thought)との違いをわかりやすく解説。また、実例を交えながら、複数案を提示し、比較・分析し、最適解を導き出すToTの設計法を丁寧にご紹介します。この記事を読めば、複雑な意思決定を“見える化”し、納得感と戦略性を兼ね備えた答えを引き出す力が身につくはずです。
ToT(Tree of Thought)式プロンプトとは?
ToTとは?
ToT(Tree of Thought)は「思考の樹形図」とも呼ばれ、複雑な課題を複数の観点から並列で検討し、最適な解決策を導くプロンプト設計法です。Google Researchなどが提唱しており、多変量分析や戦略的意思決定など、単一解では不十分なテーマに強みを発揮します。
従来の「直列的思考」(Chain of Thought:COT)では1本の筋道を追うのに対し、ToTは「分岐思考」をAIに促します。これにより、複数のアプローチを自然に比較・評価できるようになります。
COTとの違い
特徴 | COT(Chain of Thought) | ToT(Tree of Thought) |
---|---|---|
思考の構造 | 直線的(ステップを順に) | 分岐型(並行して複数案を検討) |
得意な課題 | 論点が明確な単一解答を求める問題 | 比較・評価が必要な複雑かつ多解答の課題 |
出力の例 | ロジカルな説明 | 各選択肢のメリット・デメリット、最適策の選定 |
ToTプロンプトの基本構造
- 複数の解決策を提示
→ 例:選択肢A・B・Cとして分岐させる - 各選択肢の利点・欠点を分析
→ メリット・デメリット、影響やリスク面を整理 - 最適な選択肢を選び、その理由と実行手順を説明
→ 根拠に基づいた意思決定を促進
使用例:副業を始めたいが時間がない人向けに
「私は本業が忙しく、月3万円程度の副収入を得たいと考えています。副業の選択肢を3つ挙げ、それぞれのメリット・デメリットを比較してください。最後に、もっとも適しているものを教えてください。」
ChatGPTのToT的な出力例:
選択肢A:クラウドワークスでのライティング業務
- メリット:自宅でできる/スタートが容易
- デメリット:単価が低く、収入獲得に時間がかかる可能性あり
選択肢B:せどり(転売ビジネス)
- メリット:在庫管理が上手くいけば高利益
- デメリット:仕入れ・発送に手間がかかり、初期費用も必要
選択肢C:スキル販売(ココナラ等)
- メリット:得意分野を活かせる/時間の自由度が高い
- デメリット:集客までに時間がかかる可能性あり
→ 結論:選択肢C(スキル販売)が最適
理由:限られた時間の中でも、自分のペースで取り組める点が大きい
ToT式プロンプトの強み
- 多角的な視点から検討可能:単一案にとらわれない
- 柔軟な思考の促進:複数アプローチを並行検討
- 客観的な意思決定の追求:比較に裏付けがある納得の選択
- 戦略系タスクへの適性:プロジェクト選定や企画立案などに最適
ToTが活きるシーン
- 複数案が存在する問題で、最善策を決めたいとき
- メリット・デメリットの比較が重要なシチュエーション
- 判断軸が複数あり、戦略的意思決定や優先順位の明確化が必要な業務
まとめ
ToT式プロンプトは「思考を分岐させ、複数案を比較→分析→最適解を導く」フレームワークで、特に複雑で多解答が想定される問題に効果的です。COTと比べて柔軟な発想を引き出せるため、ビジネスやマーケティング、戦略立案などで活用すると、より納得感のある解答が期待できます。